コラム

2026/09/18 コラム

少年事件で社会内処遇を実現する付添人の活動【弁護士解説】

少年事件、特に性犯罪(不同意性交等・児童ポルノ関連行為など)が絡む事案では、家庭裁判所が少年院送致を選択する可能性が高い類型とされています。しかし、付添人が適切に活動することで、少年院送致ではなく保護観察などの社会内処遇に至る事案も少なくありません。本稿では、性非行に関する少年事件(フィクション)を題材に、付添人が社会内処遇を実現するために行う活動と実務上のポイントを解説します。

※本稿は、実際に担当した事案を基にしつつ、少年及び関係者を特定できないよう、事実関係・時系列・人物設定等に大幅な変更を加えたフィクションです。実在の事件・人物とは関係ありません。

はじめに

性犯罪に関わる少年事件、とりわけ被害者が低年齢である事案や、児童ポルノ関連の行為が絡む事案は、家庭裁判所が少年院送致を選択する可能性が高い類型です。しかし、付添人として適切に活動すれば、少年院送致ではなく保護観察などの社会内処遇に至る事案も少なくありません。

本稿では、ある少年事件(フィクション)を題材に、付添人が社会内処遇を実現するためにどのような活動を行うのかを、実務上のポイントとともに解説します。

事案の概要(フィクション)

高校生のB君は、SNSを通じて知り合った年少の女子との間で、不同意性交等に該当する行為に及び、その様子を撮影して自己のスマートフォンに保存していたとして、不同意性交等及び児童ポルノ製造の非行事実により、観護措置がとられ、少年鑑別所に収容されました。

非行事実自体は重大であり、家庭裁判所が少年院送致を選択してもおかしくない内容でした。付添人としては、単に「少年院は避けたい」と主張するだけでは説得力を持ちません。そこで、次の3つの活動を並行して進めました。

  • 内省を「見える化」する
  • 被害者側との関係を、できる範囲で調整する
  • 記録を読み込み、専門機関の判断に「乗る」

付添人が社会内処遇の実現に向けて行った3つの活動

活動① 内省を「見える化」する

少年鑑別所に収容された少年は、多くの場合、自分の行為の意味を十分に理解できないまま時間だけが過ぎていきます。付添人としては、面会のたびに「なぜこの行為がいけなかったのか」「相手はどう感じたか」を具体的に問いかけ、その日その日の気づきを日記(内省文)として書き留めるよう促しました。

ポイントは、内省文を「反省しています」という抽象的な言葉で終わらせず、相手の態度や言葉に表れていた「ためらいのサイン」に本人が気づけていなかったこと、そして今後はそうしたサインを見逃さないようにしたいという、具体的な気づきのレベルまで掘り下げることです。

付添人は、この内省の経過を、数回に分けて意見書として家庭裁判所に報告しました。一度にまとめて提出するのではなく、時間の経過とともに内省が深まっていく過程を段階的に示すことで、「取ってつけた反省ではない」という説得力を持たせることができます。

活動② 被害者側との関係を、できる範囲で調整する

被害弁償や示談は、性非行事案では簡単に進むものではありません。無理に働きかければ、かえって被害者側の心情を害することもあります。

本件(フィクション設定)では、被害者の保護者と連絡が取れたため、少年が自ら書いた謝罪の手紙を送付することについて了承を得ました。示談や損害賠償の話は別問題として切り離し、まずは謝罪の気持ちを伝えることに徹しました。付添人としては、被害者側が損害賠償請求権を放棄したわけではないことを明確にした上で、謝罪文の送付という限定的な環境調整を丁寧に進めました。

この経過も意見書として家庭裁判所に報告し、被害者側の被害感情が少なくとも悪化していないことを、可能な範囲で示しました。

活動③ 記録を読み込み、専門機関の判断に「乗る」

観護措置がとられた事案では、少年鑑別所が鑑別結果通知書を、家庭裁判所調査官が意見書を、それぞれ作成します。審判期日が近づいた段階で、付添人はこれらの記録を閲覧できます。

ここで重要なのは、付添人が独自の理屈だけで社会内処遇を主張するのではなく、鑑別所・調査官という専門機関の判断内容を正確に把握し、その判断と整合する形で最終意見書を構成することです。

本件(フィクション設定)では、鑑別所・調査官のいずれもが、少年の問題性は反社会的な人格傾向ではなく、共感性の乏しさや認知の偏りに起因するものであり、矯正教育(少年院での処遇)までは必要ないと判断していました。付添人としては、この判断を土台としつつ、少年自身の内省の深まりや被害者側との関係調整の経過を重ね合わせることで、「専門機関の判断」と「付添人としての観察」の両方から、社会内処遇の相当性を裏付ける意見書を作成しました。

審判当日 ― 書面に書いたことを、言葉にする

意見書を提出して終わりではありません。審判当日、裁判官から「付添人の意見は」と問われた際には、「意見書記載のとおりです」で終わらせず、その日の審理で少年自身が語った言葉、保護者の様子など、当日ならではの要素を踏まえて口頭で補足することを心がけています。

少年にとって、審判は自分の今後を左右される緊張の場です。付添人が最後まで自分の言葉で意見を述べてくれたという経験は、その後の更生意欲にも影響します。

おわりに

性非行の少年事件で社会内処遇を実現するために特別な魔法があるわけではありません。少年本人の内省を具体的な言葉として積み上げること、被害者側への配慮を欠かさず環境調整を進めること、そして専門機関の判断を正確に踏まえた説得力のある意見書を作成すること。この地道な積み重ねが、結論を左右します。

少年事件、とりわけ性非行に関わる事案でお悩みの保護者の方は、早い段階で弁護士にご相談されることをお勧めします。少年事件の手続きの流れについては、少年事件の基礎知識のページもあわせてご覧ください。

なお、保護処分の種類や少年事件の手続き一般については、裁判所が公表している少年事件Q&A(裁判所)もあわせてご参照ください。

刑事事件・少年事件でお困りの方は、東大阪・八尾の弁護士法人はなぞの綜合法律事務所までお気軽にご相談ください。

   

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